2013年07月30日

「風立ちぬ」は、観る人によりテーマが違う。モネの「日傘をさす女」と重ねて・・・

 この映画のポスターは、モネの「日傘をさす女」をイメージさせ、観たいとの想いを増幅させる。内容は、零戦を設計した堀越二郎の生涯に堀辰夫の恋物語「風立ちぬ」を重ね合わせたものだ。宮崎駿監督の作品であるが、館内に子供の姿はごくわずかで、ほとんどシニア世代で埋まっていた。この映画は、観る人によってテーマが違う。エンジニアの夢、ラブストーリー、戦争へと進んだ時代背景、大正・昭和初期の価値観、関東大震災と戦争の教訓など。二郎が学生の時、汽車の中で関東大震災に遭い、少女と婦人を助けるところからストーリーが展開する。美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、大きなパラソルの下で写生する少女(菜緒子)と恋する。

 私の好きな箇所はここだ。二郎は、勤勉で飛行機好きな少年だった。図書館で「兄の辞書を借りますから。」と言って英語の飛行機雑誌を借りてくる。夢の中で外国人が「君はなぜここにいるのか。」と話しかけてくる。「カプローニ伯爵ですね。」戦後本格運用される巨大旅客機に二郎を乗せ、案内する。「私は飛行機を造る人間・設計家だ。飛行機は戦争の道具でも商売の手立てでもなく、それ自体が美しい夢なのだ。設計家は夢にカタチを与えるのだ。」夢から覚めた二郎は、「僕は飛行機の設計家になります。」と母に言った。好奇心と問題意識を持ち、魚の骨の曲線の美しさに見とれ、飛行機の設計に活かそうと考えていた。

 この作品には、もう一つ懐かしいアイテムが出てくる。堀越二郎の愛用品であった計算尺だ。何回も出てくる。棒状と円盤状があり、使っているのは棒状のもの。掛け算・割り算のほか、三角関数や平方根も計算できる便利アイテムである。できることは電卓と同じ。今は電卓の普及で、1970年代前半以降絶滅しているアイテムだ。私も学生時代にお世話になったアイテムである。彼と同僚の本庄が、もうびっくりするほど片時もこの計算尺を手放さない。堀越二郎というキャラを物語るアイテムの一つとなっている。今考えると、よくこの計算尺だけで、飛行機が設計できたものだと思う。

 原作者の趣旨は、現代の子供があの時代に行ったらどう行動するかを想定して描かれており、主人公の青年が迫りくる戦争の足音を敏感に感じ取る場面を描くことで、戦争を想像する重要性を訴えているそうだ。それとは別に、私が驚愕したことは、入社5年目の新人に飛行機全部の設計を任せてくれたのかということ。当時の常識なら、20年ぐらい経験を積まないと任せてくれないだろう。私も似たような経験をしたことがある。入社5年目で、機械設システム全体の設計を任された。自身の経験からその理由を推測してみる。斬新な設計が期待され、好奇心や挑戦心旺盛で、システマチックな仕事の進め方の基本を身に着けていたため。つまり、技術の基本が身に付き、コンピテンシー(成果に直結する行動特性)を備えていたためと思われる。


【 ぷろえんじにあHP】
 http://www.proengineer-institute.com/
【関連する記事】
posted by proengineer at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/370648793
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック