2014年02月24日

右脳派、左脳派は都市伝説だった。利き脳は存在しない

 米ユタ大学のジェフ・アンダーソン博士が、右脳と左脳の仕組みについて検証している、。ジャーナル誌『PLOS ONE』に掲載された論文では、国際神経画像データ共有イニシアティヴ(INDI)の機能的磁気共鳴映像法(fMRI)データを利用し、安静時の脳の機能的結合状態を7,266の関心領域(ROI)に分けて分析している。非常に興味深いデータとなっている。アンダーソン博士率いる研究者チームは、7歳から29歳までの被験者1,011人の安静時の脳の結合状態を分析した。これにより右脳半球・左脳半球の側性化を、子どもから大人まで徹底的に調べ上げた。

 仮説に反して、研究チームが得た結果は、上記の“脳タイプ判別”に反するものだった。「脳の機能が左右で分かれているのは紛れもない事実。言語はたいてい左脳で処理され、注意は右脳で処理されることが多い。だが脳のネットワークにおいて、どちらかの半球がより多く使用されるということはない」と報告している。7,266におよぶ関心領域を綿密に調査したあとでも、個人の右脳または左脳ネットワークに、結合量や使用量の偏りはみられなかったそうだ。また、片半球の機能的結合は、子どもよりも大人の方がわずかに多いという結果になったが、これまでの研究に反し、男女の違いはみられなかった。

 人間の性格は確かに脳で発生するが、それを右脳・左脳の機能に関連づけてシンプルに判断するには複雑すぎるということのようだ。もしかすると性格というのは、脳のシグナルの強さや片半球の結合状態では決まらない可能性もある。皆さんも知っていることば、論理的な人がクリエイティヴになれることもあるし、その逆もある。人は左右偏りなく、脳を使っているのである。

 実務では、右脳と左脳を総動員させて、収束(結合とかまとめること)させたり、発散(新しいアイデアを発想すること)させたりして解決策を創出することが求められる。そこで、右脳と左脳を交互にうまく使いこなして、スピーディに発想する方法を武装することである。TRIZが正にその技法なのである。例えば、難しいことは考えずに、40の発明原理をヒントに課題や問題点の対応策を発想してみよう。これだけでも、問題点、課題解決だけでなく、多くの特許出願も夢ではない。


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2013年12月12日

日本の財政の崖(絶壁)を無視すると4月以降が恐ろしい。想定外ではない。

 このブログのテーマと違うと思われる方もいるかもしれないが、ここ10年ぐらいで非常に重要なテーマの一つで、本質思考に関することなので取り上げた。12月11日のブルームバーグ(Japan Headed for Fiscal Cliff, High Frequency Economicssays)の記事は、ショッキングな内容で警鐘を鳴らしている。カール・ワインバーグ氏らハイ・フリークエンシー・エコノミクスのエコノミストがリポートでこのような見方を示した。アベノミクスは安倍首相の自民党への支持を高めるために初期に多くの策を打ち出したが、財政による景気刺激の速いペースは今後3カ月程度で減速するだろうとし、来年4月に崖から落ちるだろう。また消費税引き上げの影響を相殺するための新たな刺激策はまだ「完全に策定されていない」とも指摘。アベノミクスが終わった後それに代わる財政政策を実施する資金が日本にはないだろうとし、追加策は赤字財政支出を増やすだろうとしている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルでは次のように書いている。4月実施の消費税引き上げは国内総生産(GDP)をすぐに1%ポイント低下させる。アベノミクスと呼ばれる特別公共支出の終了は経済成長率をさらに1%ポイント低下させる。合計でこれらの変更は来年第2四半期のGDP成長率を年率ベースで8%ポイントも低める。アベノミクスによる財政支出は最近の四半期になっていくらかの経済成長を可能にしたが、たいしたものではない。第3四半期の最初の予想は、公的支出のGDP成長率に対する寄与は1%ポイント未満だ。また全アベノミクス政策は年間のGDPの2.7%に相当する。しかし、物やサービスを生産する経済の潜在力は労働人口が老齢化し引退するに従って徐々に低下してきている。アベノミクスが始まってからの消費者物価の上昇は円安のおかげであった。そして、貿易収支の赤字は警告が必要なペースで拡大している。アベノミクスによる特別公共支出が来年の4月に終われば、財政刺激策から財政抑制策に変わる。3%の消費税引き上げは、実施されればGDPを押し下げるだろう。まともなエコノミストは一時的なCPIの上昇が増税によって起こった場合はこれをインフレとは呼ばない。来春に日本が財政の崖から崩落することは避けようがない。

 日本のエコノミストで、上の記事よりも先に警鐘を鳴らし続けたのは植草一秀氏一人だけだ。9月17日に、参議院議員会館会議室で消費税増税に反対する緊急アピールの記者会見を行った際、2014年度の日本版「財政の絶壁」問題についての見解を示している。日本のメディアは、日本版「財政の絶壁」問題をまったく取り上げていない。国会でも議論されていない。要約すると次のようになる。2013年の米国経済最大の問題は、「財政の崖」問題だった。米国財政収支をGDP比3%規模で圧縮する政策が提示されていた。米国経済が「財政の崖」を飛び下りたなら、2013年の米国経済は大不況に転落していたはずだ。米国は「財政の崖」を飛び下りることを回避した。財政赤字削減の規模をGDP比1.5%に抑制したのである。だが、日本は異なる。このまま進むと、日本は2014年度に「財政の絶壁」に転落する。1997年度に日本経済が崩落したときもまったく同じだった。1996年6月25日に橋本政権が消費税率2%引上げの方針を閣議決定したときに、これを契機に事態が暗転すると指摘している。

 崖という翻訳では、危機感は伝わってこないが、fiscal cliffを直訳すれば、絶壁なのである。その根拠を分かり易く定量的に植草氏が説明している。今後9兆円の負担といわれる消費税増税が実施され、景気の腰折れを防ぐために、6兆円規模の経済対策が実施されようとしている。今の日本の景気を支えているのは、2013年になって施行された13兆円の補正予算だという。来年2014年はこの13兆円の効果は続かない。つまり、来年度のマイナスは、増税負担9兆円の他に、補正予算13兆円のマイナスで計22兆円。安倍政権が5.5兆円の対策を講じるとしても、差し引き16.5兆円、GDP比約3%のブレーキがかかる。大企業社員の一時的賃上げなど糠に釘なのである。その証拠に、グローバル化と少子化により外国人労働者を受け入れるときには、賃金の地滑り的ダウンが待ち受けている。本質思考のできる人ならば、これらのことは容易に理解できよう。努々(ゆめゆめ)、想定外の出来事と思わぬように今から対応を考えておくべきであろう。

 
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2013年12月11日

新卒ニート数は、グローバル化の指標なのか

 今年度の文部科学省の調査で、大学を卒業した約56万人のうち6%にあたる約3万3千人が、就職も進学もしないニートであるという。ここ数年、この傾向が続いている。ニートの合計は、約60万人と言われている。ニートの増加は、グローバル化で競争社会にさらされ、それを拒否しつづけた結果なのだろうか。グローバル化の副作用と言ってもいいのか。ただ、親の給料や年金がセーフティネットとなっているため、顕在化しているが、対応策は先送りされている。国も親も危機感が不足している。

 世界中にはニートが約6億人もいると言われている。国際労働機構(ILO)は経済協力開発機構(OECD)加盟国を対象とした調査結果をまとめた。1位…トルコ(36.6%)、2位…イスラエル(27.4%)、3位…メキシコ(24.4%)、4位…スペイン(23.7%)、5位…イタリア(23.0%)、6位…アイルランド(21.0%)、7位…韓国(19.2%)、8位…エストニア(19.1%)、9位…ハンガリー(18.9%)、10位…スロヴァキア(18.8%)。最もニートが少ないのはルクセンブルク(7.1%)で、日本は9.9%の30位である。

 競争社会で失敗した人は、無職になる。ここで失敗した時にハローワークに駆け込めば、中高年ニートではなく、失業者として次を目指すことが可能だが、失敗者のほとんどがハローワークに行くことをせず、過去の人脈の中から転職先を探そうとするのだそうだ。失敗者の人脈は弱い。弱いから失敗した。その人脈で再就職しても失敗する確立は高くなるのだろう。そうやって、5年、10年と長期に中高年ニートを続けることになるという。産業の空洞化だけでなく、注目されているTPP交渉が締結されれば、外国人労働者が増加するだろう。さらに失業者が激増して、新卒ニートも増加する可能性が高い。

 新卒者の想いはどうなのだろうか。有名企業に入りたけど入れない。非正規社員だけにはなりたくない。親が安易に許してしまうのも原因の一つである。企業は即戦力を求めている。新卒だからと特別に採用してくれない時代になってきた。進学率が、25年前に比べて倍以上となっているが、企業が求める人材は増加しているとは言えない。必然的に非正規社員が増加し、限定正社員となって解雇がしゃすくなってしまう。以前、ユニクロの柳井社長が発言してメディアでバッシングされたことが正しいことが証明される日も近い。なぜなら、グローバル化が進むと、日本の給料も世界標準に収れんされていくはずである。客観的に分析できる人には、弱肉強食化施策の多くが、グローバル化の一断面であることが理解できるはずだ。これらを乗り切るためには、自分の頭で考え、判断する能力を磨くことが最重要課題なのだ。

 
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2013年07月30日

「風立ちぬ」は、観る人によりテーマが違う。モネの「日傘をさす女」と重ねて・・・

 この映画のポスターは、モネの「日傘をさす女」をイメージさせ、観たいとの想いを増幅させる。内容は、零戦を設計した堀越二郎の生涯に堀辰夫の恋物語「風立ちぬ」を重ね合わせたものだ。宮崎駿監督の作品であるが、館内に子供の姿はごくわずかで、ほとんどシニア世代で埋まっていた。この映画は、観る人によってテーマが違う。エンジニアの夢、ラブストーリー、戦争へと進んだ時代背景、大正・昭和初期の価値観、関東大震災と戦争の教訓など。二郎が学生の時、汽車の中で関東大震災に遭い、少女と婦人を助けるところからストーリーが展開する。美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、大きなパラソルの下で写生する少女(菜緒子)と恋する。

 私の好きな箇所はここだ。二郎は、勤勉で飛行機好きな少年だった。図書館で「兄の辞書を借りますから。」と言って英語の飛行機雑誌を借りてくる。夢の中で外国人が「君はなぜここにいるのか。」と話しかけてくる。「カプローニ伯爵ですね。」戦後本格運用される巨大旅客機に二郎を乗せ、案内する。「私は飛行機を造る人間・設計家だ。飛行機は戦争の道具でも商売の手立てでもなく、それ自体が美しい夢なのだ。設計家は夢にカタチを与えるのだ。」夢から覚めた二郎は、「僕は飛行機の設計家になります。」と母に言った。好奇心と問題意識を持ち、魚の骨の曲線の美しさに見とれ、飛行機の設計に活かそうと考えていた。

 この作品には、もう一つ懐かしいアイテムが出てくる。堀越二郎の愛用品であった計算尺だ。何回も出てくる。棒状と円盤状があり、使っているのは棒状のもの。掛け算・割り算のほか、三角関数や平方根も計算できる便利アイテムである。できることは電卓と同じ。今は電卓の普及で、1970年代前半以降絶滅しているアイテムだ。私も学生時代にお世話になったアイテムである。彼と同僚の本庄が、もうびっくりするほど片時もこの計算尺を手放さない。堀越二郎というキャラを物語るアイテムの一つとなっている。今考えると、よくこの計算尺だけで、飛行機が設計できたものだと思う。

 原作者の趣旨は、現代の子供があの時代に行ったらどう行動するかを想定して描かれており、主人公の青年が迫りくる戦争の足音を敏感に感じ取る場面を描くことで、戦争を想像する重要性を訴えているそうだ。それとは別に、私が驚愕したことは、入社5年目の新人に飛行機全部の設計を任せてくれたのかということ。当時の常識なら、20年ぐらい経験を積まないと任せてくれないだろう。私も似たような経験をしたことがある。入社5年目で、機械設システム全体の設計を任された。自身の経験からその理由を推測してみる。斬新な設計が期待され、好奇心や挑戦心旺盛で、システマチックな仕事の進め方の基本を身に着けていたため。つまり、技術の基本が身に付き、コンピテンシー(成果に直結する行動特性)を備えていたためと思われる。


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2013年05月28日

独創性・創造性にはスキルより大事なものがある。技術では真似のジョブスも名言を残した。

 教育の究極の理想解は何か?それは 『教育をしないこと』である。ちょうど10年前、ソニー社員時代の古い手帳を見つけた。そのメモから井深大氏と盛田昭夫氏のソニー創業者2人のメッセージに、セレンディピティ現象が起きた。思えば、新人のころ、井深大氏のライフワークの一つであった福祉機器開発のプロジェクトメンバー5人の1人として、一緒に仕事をしたことがあった。そこで、強烈に印象に残った言葉が、「好奇心」と「独創性」というキーワードである。

 もう一人のソニー創業者の盛田昭夫氏も、創造性を次のように定義していた。「創造性は、すでに存在する情報の処理や分析から出てくるものではない。それは人間の思考、絶え間のない洞察力、そして多くの勇気が必要である。」これらから、モチベーションやコンピテンシーが人財開発の本質だと確信できた。つまり、TRIZなどの創造性スキルだけでは、独創性や創造性を実現できない。コンピテンシーと呼ばれる行動特性が、威力を発揮するわけである。

 米アップルと韓国サムスン電子がスマートフォンなどの特許やデザインを巡って争った訴訟で、米裁判所がサムスンがアップルの一部特許を侵害したとの評決を言い渡した。サムスンが一方的に打撃を受けたと断じるのはまだ早い。斬新な商品で市場を切り開く「パイオニア」アップルと、その後を追う「フォロワー」のサムスン。サムスン自身は審理のなかで「iPhoneの成功に刺激されて、スマホを開発した」と打ち明けている。そして、サムスン側は、「アップルもソニーの影響を受けていた」と指摘。そういう意味では、アップルもサムスンと大差がない。MacやiPadのオリジナルは、元はゼロックス社のパロアルト研究所で「ユビキタス」と呼ばれるコンセプトとともに20数年前に開発された。ある時、ジョブスがパルアルト研究所を見学して、その後アップルで商品化したものであるからだ。

 2000年ごろから、毎年、約1万人の社員のコンピテンシー(成果に直結する思考・行動特性)データを分析して、成果を出すための能力開発とはどうあるべきかについて研究してきた。 そこから導き出した結論はこうなる。「教育とは、自ら気づき、自律的に行動するように仕向けること」そのコンピテンシーで重要な特性・能力(想いのようなものも含む)の具体例を3つあげれば、挑戦心、やりきる力、多様性を承認できるコミュニケーション能力であろう。アップルのジョブスがこのコンピテンシー(行動特性)の意味を表す名言を残している。「出来ないのは、技術が足りないのではなく、想いが足りないからだ。」





 ユビキタス動画:26年前、Xerox PARCのMark Weiserは、現代のスマホ、iPad、TV会議システム等のコンセプトを既に試作していた。アップルのジョブスやマイクロソフトのビルゲイツは、これらを見学後、MacやWindowsなどを事業化した。


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2013年05月17日

 本当に、ブルーライトカット眼鏡は必要か。メーカーCMに誘導されて購入していないか。

 眼鏡を作ったことのない私が、眼鏡のJINSに行ってきた。ノートパソコンのLEDバックライトタイプを購入し、少し眼精疲労を感じたため、ブルーライトを軽減できる眼鏡を見るためだ。店舗の展示方法は、眼鏡フレームの種類、材質、形状および色で選べるようになっている。価格も、5990円、7990円ぐらいでフレームと度付きレンズが買える。初めて、眼鏡を作る身にとって、商品概要をネットで確認してから店舗に向かった。実際には、ブルーライトカットが付加すると、さらに、3990円がプラスされた。予想より安くはなかった。

 評判の店だけあって、店内は少し混んでいた。手の空いている店員が応対してくれた。ネットに表示されている基本的情報をいくつか質問した。それらにまともに答えられず、別の店員に聞きに行った。初めて眼鏡を作る身にとって、非常に不安な気持ちになった。結局、基本的情報は得られたが、客の想いを聴こうとするようには感じられない。他の商品なら、この店は諦めて、別の店に向かうところであった。そして、目の検査まで進んだ。たまたま、待合室で、長時間待たされた客が、店員の対応の悪さにブチ切れていた場面に遭遇した。両社の言い分を聞いてみると、怒るのも無理はない。

 目の検査は、アルバイト店員ではなくテキパキ処理できる店員であった。遠視、近視、乱視、老眼の度数を瞬時に自動測定できるハイテク測定器も使用していた。視力は別の機器で測定した。エンジニアの私は、機器の精度の高さに納得して、不安感が少し和らいだ。ここで、度数に合ったレンズでかけ心地を確認し、レンズの種類を選択した。最後に、フレームの調整を行い、購入手続きまで進んだ。しかし、レンズの大きさ、フレームの形状、色などのデザインのマッチングは、まだとられていなかった。結局、マッチングで、チタン合金のフレームを選んだため、高価な眼鏡となってしまった。

 ここで、非常に重要なことに気が付いた。この店では、眼鏡の選定から購入までのプロセスの説明をいっさいしてくれなかった。これが不安の根本原因なのだ。最初に接客するアルバイト店員は、非常に勉強不足で、不快にさえ感じてしまう。現在では、店舗数も急増中で、飛ぶ鳥を落とす勢いがあるが、強力な競合が現れると、店の評判はガタ落ちになる。店舗では、商品の魅力度も差別化の一つであるが、接客も重要な要素である。後で、眼科医に、ブルーライトの医学的問題点について問い合わせたところ、医学的に検証された論文は実在しないそうだ。CMに誘導されて購入してしまったかもしれない。


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2013年04月11日

社員追い出し、リストラ部屋への対抗策として、キャリアダウンの勧め

先日、ある人材開発支援会社が、企業社員のキャリアカウンセリング事業を立ち上げたいということで、ベテランのカウンセラーを募集していた。興味があったので、その説明会に参加してみた。説明会場に入ると、参加者はほとんど年配の方々で、いままでやってきたキャリアカウンセリングの現場と比べて、暗い雰囲気が漂っていた。「社員再生計画(仮称)」と書かれた説明資料が机の上に置かれていた。嫌な予感はしたが、一通り説明を聞くことにした。専門用語で言えば、PIP (Performance Improvement Plan)のことである。話題の「人材強化センター」、「キャリアデザイン室」などリストラ部屋に移動させられた社員へのプログラムも、これだと思われる。

 クライエントとなるほとんどの大手企業では、社員の約1%の輝きを失ってしまった社員が存在するとのこと。現在、社会で話題の電気メーカーでは、各々数百人規模になるらしい。地頭力の計算で試算しただけでも、日本だけで数百億円のビジネスチャンスとなるだろう。対象者は、40代、50代社員がほとんどのようだ。プログラムは、クライエント企業の人事担当、対象社員、上司、キャリアカウンセラー(個人)、人材開発支援会社ファシリテーターをいくつかのパターンで組み合わせて、面談や報告会を数回繰り返すものであった。プログラムの目的は、あくまでも、輝きを失った対象社員に自信をもたせて、自主的に転職してもらうことである。そして、転職の意思が固まると、転職支援サービスが受けられるものであった。ただ、うつなどの患者は、対象外であった。おそらく、産業医の担当であろう。

 安倍政権の産業競争力会議では、解雇を原則自由にする法改正を議論している。いままで、正社員を解雇する時、人員整理の必要性、解雇回避努力義務の遂行、被解雇者選定の合理性、手続きの妥当性の解雇4要件を満たさないといけなかった。。解雇規制緩和の理由は、労働市場を流動化して成長産業へ人が移動することで経済が成長し、労働市場が拡大することらしい。ドイツの事例では、短期的に失業者が500万人を超えたが、長期的には、雇用の流動性が高まり、逆に労働市場が拡大して失業者が減少したことを根拠にあげている。その法律が施行されるまでは、社内の担当者ではなく、社外のキャリアコンサルティング会社や人材紹介会社、産業医などが退職勧奨を行う立場になる、外部の人ならば、労働法上、退職勧奨にならないのだと言われている。

 「カウンセラーに話したことが、人事部に筒抜けになっているのではないか。」追い出し部屋のような事例が多くなるにつれて、企業でのキャリアカウンセリングが、相談を希望する社員の疑心暗鬼を深めることになる。昨今では、40代、50代のキャリアを積み上げた人たちでさえ、転職でキャリアアップすることは、至難の技である。輝きを失ってしまった社員を再生することは、さらに難作業になる。その打開策の一つとして取り上げたい方法は、キャリアダウンである。少しの努力で達成可能な、人材ニーズのある業種への職種転換である。例えば、介護、環境保全、NPO活動分野などが狙い目となる。プライドを捨て、肩肘張らずに、健康第一が幸福の近道となるのではないだろうか。


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2013年03月25日

ハローワーク非正規相談員の雇い止め、正社員にも解雇規制緩和の動き

 先日の東京新聞によると、ハローワークの非正規相談員などの2,200人が、突然「雇い止め」を告げられたとのこと。職員たちは、失業者の相談に乗りながら、自らも職を探している。これはジョークでなく現実の話である。民間企業が非正規労働者を採用する際は、労働契約法やパート労働法で規制され、雇い止めには歯止めがかかる。公務職場の非正規職員の場合、国家公務員法などに基づき「任用」される。1年単位で任用する非正規職員を保護する規定はない。ある非正規相談員は次のようなコメントをしている。「毎年、1月、2月になると更新されないのではないかと、びくびくしています」

 厚生労働省によると、2012年度の全国のハローワークの職員は31,765人。うち、非正規職員が20,176人と全体の63・5%にも及ぶ。部署によっては、正規職員の10倍以上の非正規職員がおり、主なサービスの担い手となっている。非正規職員は、リーマン・ショック後の2009年度に増員され、東日本大震災後も増やされた。労働組合は「被災地などでは、まだ多くの業務がある。大幅に減らしていいのか」と批判し、雇い止めになる職員に労働行政にふさわしい、きめ細かな対応を取るよう求めている。

 安倍政権の成長戦略づくりを担う産業競争力会議では、解雇を原則自由にするよう法改正が求められた。ショッキングなニュースである。いままで、正社員を解雇する時は、整理解雇の4要件を満たさないといけなかった。人員整理の必要性、解雇回避努力義務の遂行、被解雇者選定の合理性、手続きの妥当性である。解雇規制を緩和する理由は、労働市場を流動化して成長産業へ人が移動することで経済が成長し、労働市場が拡大することだと言う。ドイツの事例では、短期的に失業者が500万人を超えたが、長期的には、雇用の流動性が高まり、逆に労働市場が拡大して失業者が減少したことを根拠にあげている。

 グローバル化が進むと、企業の寿命も長くて30年レベルになるかもしれない。現実に、繊維産業、自動車関連産業に続き、ソニー、パナソニック、シャープなどの電気産業が淘汰されつつある。就職活動の学生も、もはや終身雇用を望んではいけない時代となってしまった。会社への帰属意識など求められないだろう。では、どう対処すればいいのか。皮肉にも、カウンセラーが学ぶ理論に、そのヒントが提示されている。1つ目は、クルンボルツのPlanned Happenstance 理論である。「キャリアについては、計画はあまり重要ではない。なぜなら、計画に囚われすぎてしまうからである。行動することが重要である。」 2つ目は、不確実性の時代には、やりたいことを選ぶのではなく、とにかく目の前のことをやってみようというサビカスの理論である。「キャリアを切り拓いていくためには、変化する役割に直面したときに、その変化を受け入れて、適応できる能力というのが必要。たとえば、自らが変わることによって適切な状況をつくる、目的を持って変化する、「個人と環境の相互作用によって変わる」。

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2013年03月11日

やはり中国はリスクが大。技術伝承の本質とは、・・・

 団塊世代が定年退職し、日本の技術伝承のありかたが問われている。退職後も、継続雇用と称して、大企業は安価なコストで専門職を雇用してきた。一部の企業では、彼らに、ノウハウを吐き出させようと、彼らを教育係りとしたり、彼らの技術をデジタル化して保存しようとしている。でも、中国進出した企業の多くは、中国企業に、技術移転せざるを得ない状況となっている。さらに、政治不安から、中国からの撤退も検討されているようだ。
 次の移転先として、ベトナムやミャンマーが脚光を浴びている。私は、10年以上前から、勤務先の役員にも中国でのカントリーリスクから、移転先候補のベストな選択肢として、日本に好意的で、勤勉なベトナムを推奨してきた。しかし、会社は、目先の利益や競合他社に同調した決定を優先してしまった。

 ところで、日本のメーカーの中には、競って資産を身軽にして、ものづくりをアウトソーシングしてしまっているところも多く存在する。ことのつまりは、中国や台湾、東南アジアなどに技術移転してしまい、生産コストの安い国を探していジプシーのような生活に陥ってしまった企業さえ出現している。それと同時に、日本企業から図面やノウハウが技術流出し、先端技術も容易にコピーされる状況になっている。

 例えば、組み立て産業では、金型技術やナノ技術がコア技術になっていますが、まだまだ自社でまかなえる企業は数少ない。もはや、遅きに失した感が強いが、日本のものづくりは、金型やナノ技術のようなコア技術に人材を投入、ストック化して、技術流出のリスク管理を徹底し、真似のされない技術開発に特化する必要に迫られている。同時に、特許権や意匠権のような知的財産権の発生する分野にも力を注ぐ必要が生じている。私がライフワークとする「モチベーション」と「創造性」の目標の具現化策である人材と知財のストック化こそが、どう体制が変化しようが、ゆるぎない方策と考えられる。

<スピード発想術書籍URL>
 http://gihyo.jp/book/2010/978-4-7741-4106-0
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2013年01月28日

真のメンターに巡り合う方法

 いままで、キャリアカウンセラー、キャリアアドバイザーあるいはメンターとして、主に、研究者、技術者および工学部の学生・大学院生の相談にのってきた。その中で、クライエントから良い質問があった。「良いメンターとはどうめぐり逢えばよいのか。」でした。ちなみに、メンターとは、「仕事、キャリアあるいは人生に対して適切なにアドバイスをしてくれる人」と定義され、語源は、トロイ戦争に出てくる名教師の名前に由来している。メンターに期待することは、概ね次のようなケースである。
 @今後のキャリアパスの参考にしたい。
 A仕事、キャリアあるいは人生で困ったときにアドバイスしてほしい。
 B仕事や人生に対するスタンスや考え方のヒントを与えてほしい。

 従来のメンターは職場の上司や先輩が一般的だったようだ。最近、成果主義などの人事制度を導入する企業が増えたり、メールへのコミュニケーションの代替化が進み、先輩や上司とじっくり話す機会が少なくなっている。いくつかの企業では、メンター制度を人事制度に組み入れている。役員自らメンターになったり、選抜された優秀な人材をメンターに指名したりしている。社長にもメンターに近いコーチがついている時代だ。ある意味では、企業の求める成果に一歩近づけるかもしれないが、真のメンターになっているのだろうか。

 少しでも参考になればと思い、私がめぐり逢ったメンターについて例をあげて何人かを紹介する。入社時には、エンジニアの卵として、一対一ではないが、技能エキスパートであったり、設計のエキスパートであった。2年間メンターを付けてもっらった。しかし、真のメンターは、企業で指名されたエキスパートの方々だとは思わなかった。その責任者である技術部門長を、私自身が勝手にメンターと思い、実習ノートで本音の意見交換をしていた。理由は、実習に対して想いが一番強い人だったからだ。製品の生産設計時には、設計部門の上司や先輩ではなく、電気関係を専門とする他部門のプロジェクトリーダーをメンターと思い、ディスカッションしていた。理由は、真の目的は何かの意味で、書いた図面の線一本一本の意味を質問してもらい、専門外の人から視点を変えて、設計とは何かを教えてもらった。マーケティングや人生についてなど、まだまだ、場面場面で別の多くのメンターを勝手に指名したものだ。

 良いメンターにめぐり合うためにはどうすればよいと思うか。ジャックウェルチの新刊書の「私ならこうする(日経新聞社)」を読んでいたら、今回のテーマへのジャックウェルチの回答が、私のメンターそのものであったことが理解できた。つまり、「最高のメンターとは、会社が作る制度のようなフォーマルなものではない。社内の人間であろうとなかろうと、同じ仕事についていようがいまいがこだわらなくてよい。喜んで教えてくれる人からあらゆる機会を捉えて学ぶこと、それこそが真のメンターなのだ。」ということに共感できた。なお、私自身が多くの方々からヒントやアドバイスをしてもらった感謝の気持ちとして、私も、強い希望をもったエンジニアのメンターを引き受けている。

<スピード発想術書籍URL>
 http://gihyo.jp/book/2010/978-4-7741-4106-0
<エンジニアの生き残りのヒントがいっぱい!「ぷろえんじにあ」のHP>
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